京焼・清水焼Report

作家

作家インタビュー Vol.5 和泉良法氏

2021/08/31

陶芸家・和泉良法氏。天目や青瓷を中心に作陶し、その技術を生かした土鍋やスピーカーに至るまで、多岐に渡る作陶を続ける。そこには、明るい笑顔、時にはユーモアをまじえ趣味や作品について楽しそうに話す姿がある。

釉薬と自身の変化を楽しむ

『今後も好きな事、興味のわくものを作っていく』

青々とした畑や山々が囲む京都市北西部。木々が広がるこの地に、彼の工房はある。中へ足を踏み入れると、壁には彼が撮影した海外の風景写真の数々。脇には蕎麦打ち台。趣味に囲まれた空間は穏やかな時間が流れていた。土の香りのする工房の上部には、後に釉薬で鮮やかな変化を遂げるのであろう作りたての器があり、作業場のまわりにはいくつもの道具があった。好きな器を作る為に試行錯誤した跡が、いたるところに窺(うかが)える。新しい作品が生み出される工房を間の当たりにし、気持ちが弾んだ。

京都市東山区で生まれ育った彼は家業が清水焼の卸問屋で作品に触れる機会が多かった。大学生の時、売るよりも作る方が楽しいと思い作家の道へ歩みだす。それから好奇心にしたがい、作陶を続けてきた。

『火山灰とか結晶とか色が変わったりするからそれが楽しい』

特徴的な天目の釉薬は、自然のものを混ぜている。例えば、桜島(鹿児島)、大島(鹿児島)、雲仙普賢岳(長崎)から採取してきた火山灰や、北山杉の灰。それらを混ぜて天目の釉薬を作る。また、趣味で海外旅行をした際、気に入った火山灰を見つけると持ち帰った。新たなことをするのは何でも大好きだ。

最近は米ぬかの灰をためし、そこから生み出された天目はブルーの色や鉄粉の赤い色が出ていた。

物によっては0.2ミリ(釉薬)ほどの厚さが違うと結晶色が変わるという。感覚を頼りに微調整を加える彼の鮮やかな手さばきは、蓄積された経験のたまものである。

『好きなものを納得いくまで作る。お客さんも気に入ってくれるだろうと思って、ご意見もうれしいです』

これからも目の前にある釉薬と自身の変化を楽しみながら作り続けていく。

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