京焼・清水焼Report

作家

作家インタビューVol.10 木村宜正氏

2022/04/02

独特な色と風合いが特徴的な彼の作品は

ダークな色味に散らばる様々な模様の天目であり

まるで銀河系を覗いているようだ。

                 

釉薬は好みの色をいくつも試験した中から選んで使い、

薬を二重にかけたり、色数を増やしグラデーションにしてみたりと研究を続けている。 

『いろんな事を試してみるのが好き、これまでもこれからも好奇心は大切にしていきたい』

と穏やかな口調で語る。

代々、家業として焼き物をやっていたので、彼の祖父は京焼の上絵付けの職人

父は陶芸家。

 物心ついた時から、陶芸が身近にある環境で育った。 

『大きくなったら焼き物を作りたいなと思っていました。

勉強が嫌いでしたし、他に選択肢はなかったですね』

 

かれこれ30年。どっぷりと陶芸に携わってきた。

 学校で教わってない技術は釉薬や窯の操作、デザインもすべて独学。

手元にある材料を自分ができる範囲で工夫して、たくさんの種類の釉薬やいろんな技法を使い

多くの焼き物を生み出してきた。

『今年は時間ができたので、息子と一緒に山に土を堀りに行って、その土に合う仕事をしています』

空いた時間で採集してきた材料の数々は

砂系の土なら唐津※1にしてみたり、赤土で面白いもの見つけたら

その土を生かした粉引※2にしてみたりする。 

息子もまた陶芸の道を歩み始めた。

 

彼の落ち着いて話す姿はどんな時も、ものづくりへの心遣いを忘れない信念が伺えた。

 また、他の業種で興味が湧くことをしている人の作品を見に行く。

障がいのある人が描いた絵画が専門に置いてあるギャラリーに足を運び

絵画や木工など多彩な作品を見て、焼き物以外の物に触れる。 

『ひとつだけをやるのは苦手なので、こういった新しいものづくりを

平行してやっていけたらいいなと思います』

 

彼は思いがけない経験や試行錯誤を楽しむ時間を大切にして、

ものづくりに欠かせない遊び心を持ち、日々創作活動に打ち込む。

 

 『僕がいいなと思って作ったものを、お客さんも求めてくださるのは

とてもありがたいことだと思っています。是非、手元において長く使ってくださるとうれしいです』

 

※1 唐津……ざっくりとした粗い土を使った素朴な風合いと多彩な装飾技法が特徴の焼き物

※2 粉引……土の上に、白化粧という白い泥をかけ、釉薬をかけて焼いた器