京焼・清水焼Report
作家
作家インタビュー Vol.3 鈴木爽司氏
2021/08/02
『技術を自分で見つけ、生み出してゆく、やればやるほど深みにはまってゆく』鈴木氏の揺るがない制作の姿勢がそこにあった。今回、作陶に対する彼の思いをインタビューしました。
『今の刺激的な現代、どれだけ自分を拡大してゆけるか、毎日考えている』
京都・清水焼の陶芸家、鈴木爽司は穏やかに話す。彼の尽きない探求心。新しいものを生み出す力。
だからこそ、唯一無二の手法‘金銀彩’が生まれたのだ。
『金銀彩の手法一本に絞った、自分の生きる道として』
この独特の技法の背景には、膨大な量の研究がある。彼の成形はすべて手びねりだ。
香炉から小さなものまで。一から形を自由に作ってゆくことに面白さを知った。
『技術を自分で見つけ、生み出してゆく、やればやるほど深みにはまってゆく』
彼の揺るがない制作の姿勢がそこにある。自らの好奇心に従い創作をして、自分の中で何度も納得を重ねてきた。
『上手くいかないことが多いけどね』彼は優しく微笑む。
金銀彩で豊かな自然がいきいきと描かれた作品。野鳥や植物の細部にわたる表現。
全体を優しく包む釉薬は複数の気泡の跡。表面には細やかな貫入。目線を運ぶごとに、つぎつぎと違う景色が見える。
彼は京都で生まれ育った。住み慣れた清水を大切に思う。この地で近代陶芸の祖といわれる富本憲吉(人間国宝)、
近藤悠三に師事し、父の仕事を手伝いながら陶芸の技術を学んだ。
知らないうちに身に染み込んだ環境が、彼の作風の根幹に息づいている。
清水周辺にある自然を長年スケッチし、観察と考察を続けた。
『自然があるからこそ、今の作品が生まれてきた。自然をとらえることで、しっかりしたものが出来るという確信はありましたね』
『ながながとやってきましたが、結論なんて言うのはない。まだまだ先です』
彼の強い探求心は朽ちない。これからもどんな作品が生み出されていくのか、楽しみだ。
※金銀彩…絵付け手法の一つ
※釉薬…陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のこと
※貫入…陶磁器の釉薬部分に出来る細かいひび模様